大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和34年(ツ)109号 判決

上告人 吉田徹

被上告人 石関正雄

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

本件上告理由は別紙上告理由記載のとおりである。

上告理由一につき按ずるに

上告人が原審に於て医師の診断書を添付して書面を以て昭和三十四年六月二十三日午前十時の原審第二回口頭弁論期日変更の申立をしたことは記録により明かである。然し右申立書が原審に提出されたのは昭和三十四年六月二十三日であつたこと、右申立書に押捺されている受附印で明かであるが、その提出が右口頭弁論期日たる午前十時の前であつたか、或は期日終了後であつたかはこれを審にする資料がない。然しこゝでは右申立書は右期日たる同日午前十時の前に提出されて原審がこれを受理したものとして論旨を検討する。

本件第一審以来の経過を記録によつてみるに上告人は第一審及び原審の各口頭弁論期日に終始不出頭のまゝ訴訟が進行されている。そして右原審第二回口頭弁論期日の呼出状は一ケ月前である昭和三十四年五月二十三日に上告人に送達されていることも記録添付の送達報告書(第一七丁)により明かである。なお上告人が原審に提出した昭和三十四年五月十六日付(第一六丁)および同年六月二十一日付(第一九丁)の各診断書には感冒などに比すれば比較的長期にわたることの予想される胃潰瘍の病名がしるされている。それにも拘らず代理人の出頭について取計ることもなく右期日の当日になつて所論変更の申立をししかもその書面には被上告人の本訴請求の当否に影響のある何らの事実をも記載してないこと、右申立書自体により明かである。このような場合には、たとえ期日変更の申立人に病気その他の事由のため真に出頭しがたい事情が認め得られるときであつても、相手方の同意なき限り(相手方の同意を得たことについては本件記録上明らかにされていない。)裁判所はその変更の申立を許さなくとも何らの違法がないものと解するのが妥当である。(大審院昭和十年(オ)第二一八号同年五月十一日第三民事部判決参照)(上告人は第一審において第一回期日感冒、第二回期日には病気でなく宇都宮地方裁判所足利支部に出頭するためと称して出頭しなかつたものであること記録上明らかであるが、上告人は控訴を提起し、控訴審においても再度弁論の機会を与えられながらついに弁論の機会をつかもうとしなかつたことも記録上明らかであつてこのような場合一審で自ら弁論をなし得なかつたことを上告理由とすることができないことは、あらためていうまでもない。)原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由がない。

上告理由二について

原審上告人が原審に提出した控訴状を陳述したものと看做し控訴状記載の上告人の主張についても審理判断したものであること、原判決の理由、その他一件記録によつて明瞭であるから当事者双方の間に主張の相違があることは原審も十分これを考慮の上判決したものというべく、原判決に所論の審理不尽のかどは認め難い。この論旨も採用の限りではない。

以上説示のとおりで、本件上告は理由がないから、民事訴訟法第四百一条第九十五条第八十九条に則り主文のとおり判決する。

(裁判官 梶村敏樹 岡崎隆 堀田繁勝)

上告理由書

一、上告人は民事訴訟法第十三条に基き医師の診断書添付の上事由を明らかにし期日変更の申立を為したるが、突然判決正本の送達を受けた。従つて上告人は第一、二審ともに病床にありたる為事実審理を受けずして終結されたものである。

二、上告人と被上告人間の約束手形金請求に対しては相互間の誤差がある為事実審理必要性充分でありますので原審差し戻し再審理を請求する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例